顔面(頭蓋)の歪みに関係する筋肉と施術(1)

3)舌骨を介して頭蓋骨に影響を与える筋肉

 舌骨はどの骨とも直接関節していない宙に浮いている骨ですが、舌の基盤であるとともに、側頭骨と下顎骨に繋がっている筋肉が付着していますので頭蓋骨の歪みに関係します。
 また、舌骨は頚椎の捻れによってその位置が変化しますので、ここに取り上げる舌骨上筋群と舌骨下筋群だけでなく頚椎の状態も確認しながら対処する必要があります。

 

舌骨上筋群

 舌骨と下顎骨、舌骨と側頭骨を繋いでいる筋肉群を舌骨上筋群といいます。
 舌骨上筋群には、顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋、茎突舌骨筋があります。

顎二腹筋
  • 起始:後腹は側頭骨の乳突切痕から起こり、胸鎖乳突筋に覆われながら前下方に下って中間腱に移る。
    前腹は下顎骨の二腹筋窩から起こり、後外側方に向かい中間腱につづく(中間腱は線維性滑車によって、舌骨体に固定される。)
  • 停止:両腹とも舌骨
  • 作用:舌骨を引き上げ、また舌骨を固定するときは、下顎骨を下方に引き、咀嚼を助ける。
茎突舌骨筋
  • 起始:茎状突起の上外側部から起こり、顎二腹筋後腹の外側を斜めに前下方に向かう。
  • 停止:舌骨の体および大角(内・外の2部に分かれ、顎二腹筋の中間腱をはさむ)
  • 作用:舌骨を後上方に引く

 顎二腹筋と茎突舌骨筋は舌骨と側頭骨をつなげていますので、舌骨の状態に注目するのが最初の確認です。
 顎二腹筋は舌骨と下顎骨をつないでいますので、咀嚼の在り方によって変調する可能性があります。
 開口時、下顎骨を後下方に引く働きは顎二腹筋の働きです。
 ですから、顎の使い方は側頭骨の状態に影響を及ぼすと考えることができます。
 茎突舌骨筋は噛みしめによってこわばる可能性があります。

舌骨下筋群

 舌骨に繋がっている筋肉群の中で、舌骨の下方にあり、胸骨、肩甲骨に繋がっている筋肉群を舌骨下筋群と言います。
 胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋があります。

 

胸骨舌骨筋
  • 起始:胸骨柄、胸鎖関節および第1肋軟骨の後面から起こり、上方に向かう。
  • 停止:舌骨体
  • 作用:舌骨を下方に引く
胸骨甲状筋
  • 起始:胸骨柄および第1・第2肋軟骨の後面から起こり、甲状腺を越えて上方に向かう。
  • 停止:甲状軟骨斜線、また2~3の分束は甲状舌骨筋につづく。
  • 作用:甲状軟骨を下方に引く
甲状舌骨筋
  • 起始:胸骨甲状筋の続きとして甲状軟骨斜線から起こり、上方に向かう。
  • 停止:舌骨体および大角の後面
  • 作用:舌骨を引き下げ、また舌骨を固定するときは甲状軟骨を引き上げる。

 胸郭が下がったり、捻れたりしますと胸骨舌骨筋や胸骨甲状筋~甲状舌骨筋が変調して舌骨を歪ませ、下顎骨や側頭骨の歪みにつながります。
 これら三つの筋肉は嚥下動作や発声などでよく使われます。嚥下や発声、あるいは呼吸に問題があるときには状態を確認する必要があります。

肩甲舌骨筋
  • 起始:下腹は上肩甲横靱帯、肩甲骨上縁および烏口突起から起こり、斜めに上内側方に向かって中間腱に移り、頚筋膜の気管前葉につき、頚部の大血管(総頚動脈、内頚静脈)と交叉する。
  • 停止:上腹は下腹に続いて中間腱から起こり、弧を画いて上方に向かい、胸骨舌骨筋の外側で舌骨体下縁の外側部につく。
  • 作用:舌骨を下後方に引き、同時に頚筋膜を張る。

 肩甲骨の位置が変位しますと、肩甲舌骨筋が変調を起こし、舌骨の位置が変位します。さらに発声と肩甲舌骨筋は関係が深く、肩甲舌骨筋の変調は喋りに影響が出る可能性があります。

 

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