背面を全体的に観るときのポイント

 脊椎は頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個の24個があります。さらに後頭骨と仙骨も含めて背骨(脊柱)全体を観察するとき、ポイントとなる部分があります。

(1)頚椎7番周辺と仙骨及び腰椎4・5番辺りの状態とそれぞれの関連性

  • 頚椎7番の棘突起が右にずれている(CCW)人が多くいます。その上の頚椎6番はいかがでしょうか?
  • そして仙骨と腰椎の境目あたりの仙骨(仙骨底という)はいかがでしょうか? ここも右に動く(CCW)人が多くいます。
  • では、この仙骨底と頚椎7番の関係性はどうでしょうか?
  • 施術者の手動で、頚椎7番の捻れを正しい方向に動かしたときに仙骨の捻れはどうなるでしょうか?
  • あるいは、仙骨の捻れを戻すように動かしたとき頚椎7番はどうなるでしょうか?

 これらの関連性は体幹を整える上で重要なポイントになります。
 仙骨は骨盤の基盤であり、頚椎7番は頭頚部の土台になるところですから、この部分を整えることなく全身を整えることは不可能です。

 さて、頚椎7番は鎖骨と肩甲骨によって影響を受けます。また肩甲挙筋や小菱形筋の影響を受けます。
 ですから、眼精疲労などによるコメカミのこわばりは肩甲挙筋のこわばりにつながり、頚椎7番をCCWに捻ることがあります。
 そして小菱形筋のこわばりは頚椎6番、7番、胸椎1番あたりの棘突起を引っ張りますので、それらの棘突起がCCWの捻れを起こします。さらに、小菱形筋は小胸筋、腸骨筋、薄筋、短母趾屈筋と連動しますので、それらの筋肉および、周辺の骨格を確認する必要があります。

 また、頚椎6番の捻れには後斜角筋の変調が絡んでいる場合が多いので、後斜角筋と第2肋骨を確認する必要があります。前・中斜角筋と第1肋骨との関係も念頭におきましょう。
 胸椎1番は斜角筋との関係で確認しましょう。

(2)骨盤の状態と腰椎の安定性を確認する

 右利きの人の傾向として、仙骨底がCCWで左腸骨が後傾(上後腸骨棘=PSISの下がり)で右腸骨が前傾(PSISの上)+CCW、というのがあります。
 そして骨盤全体として後傾傾向にある場合、仙骨が下がり、腰仙関節がグラグラ不安定な状況になっていることが多いです。


 そして大事なことは、どの骨を正しい位置に戻すと、骨盤全体及び腰椎がしっかりするのかを確認して、施術の次の段階に進んでいくことです。
 仙骨がキーポイントになっていることもありますし、腰椎がキーポイントになっていることもあります。あるいは頚椎7番や後頭骨がポイントになっていることもあります。

 腰椎の不安定さに関しては、大腰筋との関連性が大きいのですが、伏臥位(腹ばい)で大腰筋を確認することはできませんので、大腰筋と連動する筋である大内転筋、あるいは大菱形筋で確認します。

(3)後頭骨と上部頚椎の状態と頚椎7番との関係性

 環椎(頚椎1番)と軸椎(頚椎2番)を上部頚椎と呼ぶことがあります。後頭骨も含めて、この部分は頭部の初動の動きに密接な関係があるとともに、「首の痛み」の原因となりやすい部分です。
なお、環椎には直接触れることは難しいので工夫が必要になります。
 後頭部で後頭骨のすぐ下に突出している棘突起は軸椎(頚椎2番)の棘突起です。

 上部頚椎と後頭骨の関係を考える上で確認しなければならない筋肉に後頭下筋群があります。これらの筋肉が凝っている人は大変多いので、一つ一つの筋肉をより分けて確認することは難しい場合があります。
 尚、後頭下筋群がこわばっているだけでなく凝っている(内圧が高い)人がたくさんいます。仰臥位で後頭部をしたから指圧する要領で持続刺激を加えることは、凝りを解消するために有効です。

 また、肩甲挙筋は肩甲骨と頚椎1~4の横突起を繋いでいます。中斜角筋は第1肋骨と頚椎2~7の横突起前結節を繋いでいます。これらの筋肉が上部頚椎を歪めている可能性もあります。それらを確認してください。

 そして、上部頚椎と頚椎7番との関連性を確認します。上部頚椎の歪みが原因で頚椎全体が潰れたようになり、頚椎7番が大きく歪んで、それが仙骨の歪み繋がっている場合もあります。
 手動で上部頚椎を修正しますと頚椎全体が伸びるように感じられ、頚椎7番の捻れも良くなり、仙骨を通して骨盤の状態が良くなる場合もあります。

(4)胸椎3~5番、肩甲骨、菱形筋、前鋸筋の確認

 右利きの人の傾向として、胸椎3~5番当たりがCCWの捻れをして、右肩甲骨が外側上方に歪み、骨盤では左腸骨が後傾して仙骨底がCCWに捻れ、右腸骨が外側にずれている、というのがあります。
 からだの仕組みとして「重心を掛けている側が伸びる」傾向があります。右利きの人の多くは右脚に重心を乗せているために右半身が伸び、左半身が短縮していると考えられます。ですから左股関節は伸びが悪く、左肩が後傾し下がっている可能性があります。
 これらの原因として考えられるのは、右前鋸筋がこわばり、右肩甲骨が外転していることです。肩甲骨が外にずれているために肩甲挙筋もこわばってしまい、それが右肩甲骨が外側上方にずれている状態を招いていると思われます。そして大菱形筋がこわばるため、対応する胸椎の棘突起が右側に倒れ、胸椎のCCWを招いていると思われます。

肺兪
 胸椎3番と4番の間には肺兪と呼ばれる東洋医学的治療点(ツボ)があります。実際、この辺りが凹んでいる人は呼吸器系の調子が悪い可能性があります。

(5)腎臓の腫れ(むくみ)

 腎臓は左右にありますが、その位置は上半分が胸郭内にあります。腎臓が腫れることは珍しいことではありませんが、すると腫れが胸郭を圧迫する状態、腎臓からすると胸郭に圧迫される状態になります。それが腰部の不快感や重たさ、圧迫感として感じられ、「腰が悪い」と思ってしまうときがあります。


 しかし、これは腰痛ではないですから、つまり骨格筋の変調ではないですから骨盤や背骨を整えても改善することはありません。
 足裏や掌の腎臓の反射区を指圧する方が適切です。

タイトルとURLをコピーしました