舌を上げるための施術

 私たちの肉体の構造的な傾向として、足の小趾側アーチ、鼡径部、胸郭および鎖骨、舌骨周辺などと、舌の状態には関係があります。
 舌が下がっている、舌先で下の歯を押してしまう、無呼吸症候群の傾向がある、滑舌が悪い、嚥下がうまくいかない等々、舌に関係する問題はいろいろあります。
 そしてこれらの問題に対処するために、私たちはセラピストはからだを調整するわけですが、その施術においては上記の、小趾側アーチ、鼡径部、胸郭と鎖骨、舌骨周辺に着目して取り組むのが効率的です。
 舌の問題だからと、舌筋や舌骨筋、喉元など舌骨周辺ばかりに着目した施術に偏りますと問題を解決することが難しくなります。

足の小趾側アーチ

 足のアーチは、偏平足を話題にするときによく取り上げられます。

 足の内側(母趾側)と外側(小趾側)に縦方向の2本のアーチがあり、足趾を横断する形で横のアーチがあります。
 これら3つのアーチは、立位や歩行の時など体重が足に掛かったときに、バネのように働いて地面からの衝撃を和らげてくれます。さらに、体重の重みを分散して足の負担が減るようにしてくれます。
 通常は、土踏まずのなくなってしまったような足は良くないとされていますので、内側縦アーチが最も注目されていますが、外反母趾を防ぎ、開張足を防ぐためには横アーチが重要ですし、そして、今回取り上げております、舌の状態を良くして、快適に暮らすためには外側(小趾側)アーチの在り方も重要です。

鼡径部

 鼡径部は骨盤の前面の部分ですが、全身に考えますと、上半身と下半身の繋ぎとしての役割を担っています。また同時に骨盤が内臓を支える上で、骨盤底とともに重要な働きをしています。


 鼡径部は、骨盤前面の上前腸骨棘と恥骨とその間を結んでいる鼡径靱帯を主な構造としています。
 鼡径靱帯と骨盤前面には隙間がありますが、その中を太い大腿動脈と大腿静脈、そして大腿神経、さらにリンパが通っています。そして腸腰筋と呼ばれる大腰筋と腸骨筋も通っていますが、その他にも恥骨近くに恥骨筋や長内転筋がありますので、鼡径部はとても窮屈なところであると言えます。
 腸骨筋や大腰筋がこわばったり、長内転筋がこわばったり、あるいは骨盤が歪んだりしますと鼡径部における動脈、静脈、リンパの流れは悪くなりますので、上半身と下半身の流通が悪い状態になってしまいます。そして、このような状態は舌の働きに影響を及ぼします。

胸郭と鎖骨

 胸郭と鎖骨は舌骨筋群の変調に関係しますので、それらが下がっていますと舌骨筋群がこわばって喉仏(甲状軟骨)や舌骨の動きが制限されます。ですから舌の状態に問題が起こると考えることはできます。
 胸郭と鎖骨を下げてしまう要因に腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋のこわばりがあります。そしてこれら腹筋群がこわばってしまう原因として、起始部となっている恥骨、恥骨結合、鼡径部が下がっていることが考えられます。
 そして、恥骨、恥骨結合、鼡径部を下げてしまう要因として影響力の大きい筋肉は長内転筋と薄筋と内側広筋です。

舌骨周辺

 舌の基盤は舌骨ですが、それは第3~4頚椎の前で、宙に浮いた状態になっています。そして舌骨には舌骨上筋群と舌骨下筋群が繋がっていますが、起始になっていたり停止になっていたりします。つまり舌骨は筋肉の影響を受けてその位置が決まる反面、筋肉の働きに影響を与えてます。ですから舌骨は、舌の動き、顎の動き、喉の動きなどの要として重要な存在です。
 舌骨はまた、気管とも関係が深く、そのすぐ下の甲状軟骨(喉仏)と一体化しているような固い関係で繋がっています。
 そしてこの舌骨周辺~甲状軟骨にかけて硬くなっている人がいます。「喉元が硬い」とも表現できますが、そのような人は舌の動きが制限されています。さらにエネルギーの流れも舌骨周辺の硬さで邪魔されますので、舌が下に落ちてしまうと考えることができます。


 以上ように、舌と、関所のように存在している各部位の関連性を追求していきますと、足や足首の状態が鼡径部を経由して舌に影響を与える経路が見えてきます。
 そして長内転筋と薄筋と内側広筋はチェックすべき筋肉であり、それらを整えることだけでも舌と喉の状態が良くなる可能性はあります。ですから、膝関節と足首を観察しながら母趾外転筋、短母趾屈筋、後脛骨筋などを整えるのは意味のあることです。
 しかしながら、実際には、上記だけではクライアントが満足するような大きな効果は得られません。さらに足の小趾側アーチをしっかりとした状態にすることが必要です。

舌を上げるためには「上昇する力」が必要

 結論的なこと言いますと、舌を良い状態にするためには「上昇する力」と呼べるようなエネルギーの流れが必要です。

 舌の役割にはいろいろありますが、大切な役割の一つに「口(顎)を閉じる」働きがあります。
 解剖学的な見解では、収縮することで口を閉じる働きをする筋肉は、そしゃく筋の中の咬筋と側頭筋と内側翼突筋になります。そして表情筋の中の口輪筋も働きます。また、強く口を閉じるときにはオトガイ筋なども収縮しますので、それらも閉口筋と考えることができます。

 ところがここで疑問が生じます。私たちは、基本的に口を閉じたまま眠ることもできますし、座っていることも可能です。口を閉じた状態が”普通の状態”と考えることができます。
 しかし、解剖学的な見解を元に解釈しますと、口を閉じ続けるためには、咬筋、側頭筋、内側翼突筋、口輪筋などを、人によってはオトガイ筋なども作動させ続けなければならないということになります。つまり、顔面神経(表情筋を支配)や三叉神経(そしゃく筋を支配)が刺激を出し続けていて、微力とはいえ筋肉を収縮し続けている状態が必要だということになります。

 筋肉は本来、収縮と弛緩を交互に適度に繰り返している状態が理想です。収縮だけを行っている状態を続けていますと”こわばりの変調状態”になる可能性が高まります。また、弛緩伸張し続けている状態を長く続けていますと収縮することが苦手な”ゆるみ過ぎの変調状態”となり、十分に筋力を発揮することができない状態になります。

 仮に、寝ている間に咬筋や側頭筋や内側翼突筋が微力ながらも収縮し続けていますと、それは”噛みしめ状態”と同じですから、顎関節の不調や側頭部の頭痛を招く可能性が生じます。
 また、そしゃく筋は全身筋肉の司令塔的な役割を担っていますので、そしゃく筋が収縮状態=緊張状態になっていますと、自然と首や肩や手や足にも力が入ってしまい、芯からリラックスすることが難しくなります。つまりたくさん眠っても、ゆっくり休んでも「芯から休まらない」状況になってしまいます。

 そこで、舌の役割が重要になってきます。

 舌は、舌先が上の前歯の後側(スポット)に付き、舌全体が軽く口蓋(口の中の天井)を押し上げている状態が理想です。このような状態が、リラックスした状態での舌の本来の在り方です。

 舌が下がって下の前歯を押していたり、舌に歯痕がついているような状態は異常です。このことを先ずしっかり認識する必要があります。
 なぜなら、舌が下がっている人が大変多くて多数派なので、こちらの方が普通の状態だと誤解されている可能性があるからです。

http://www5.famille.ne.jp/~ekimae/sub7-106-1.html

 舌が口蓋に接触するのがリラックス時における普通の状態であれば、自ずと口は閉じます。舌の力で口を閉じることができますので、そしゃく筋はリラックス状態になることができます。ですから、口は閉じても奥歯は少し離れた状態を実現することができます。

 さて、舌が口蓋を少し押し上げているような状態を保つためには、体内に「上昇する力(エネルギー)」が必要です。
 それはからだの中心部(芯)を流れているエネルギーであり、内なる力だと言えます。そして、このエネルギーを良い状態に保つためには、小趾側アーチがしっかりしていることと、鼡径部の状態、鎖骨と胸郭の状態、舌骨周辺の状態が良いことが必要です。
 また、その他に環椎後頭関節や上部頚椎の状態も影響を及ぼします。つまり、小趾側アーチと鼡径部などがしっかりしているだけでも事足りますが、上部頚椎の状態が良好ですと「さらに良い」状態になります。


 環椎後頭関節と上部頚椎のことを簡単に説明します。
 後頭下筋群がこわばっている、あるいは後頭骨が歪んでいる等々の理由で、ストレートネック状態になって、軸椎(第2頚椎)の棘突起が上を向いた状態、つまり椎体が下を向いた状態になりますと、頭蓋骨は後頭部が上がって顔面が下がります。すると舌を下げる力が働くようになります。反対に、環椎後頭関節と上部頚椎と後頭骨の状態が良好であれば顔面が上がりますが、それは上昇する力を増大しますし、安定化します。
(「上昇する力」については中殿筋や大内転筋も絡んできますので、別途取り上げます。)

小趾側アーチを整える

 足には、いわゆる「土踏まず」である母趾側縦アーチと、開張足を防ぐための横アーチと、そしてここで話題にしている小趾側(縦)アーチがあります。
 「偏平足」は良くない状態の足を代表する症状の一つですが、ほとんどの人は母趾側アーチを気にしています。
 あるいは、外反母趾や内反小趾では「開張足」「横アーチ」が話題になります。ですから、母趾側縦アーチと横アーチは皆さんの関心事ですが、小趾側アーチはほとんどの人が気にしていないと思われます。
 ところが「上昇する力(エネルギー)」にとっては小趾側アーチが重要です。

 母趾側アーチがハイアーチに見える人は小趾側アーチが崩れている傾向があります。「内側が上がっている反動で外側が下がっている」という捉え方も間違いではありません。

 母趾側のアーチに影響する筋肉は、前脛骨筋と後脛骨筋です。これらの筋肉が働きの悪い(≒ゆるんだ)状態ですと母趾側アーチに関係する舟状骨、内側楔状骨、第1(母趾)中足骨が下がってしまいますので、土踏まずのない、いわゆる「偏平足」になります。

 ところが、母趾側アーチがハイアーチのように見える人は、母趾側の踵近く、つまり舟状骨が後方に上がって、母趾の爪先側(母趾中足骨)が下がった状態になっています。筋肉で言いますと、後脛骨筋がこわばった状態で、前脛骨筋がゆるみ過ぎている状態です。
 ヒールの高い靴を履いているわけでもないのに、足の形はヒールの高い靴を履いているような状態になっています。
 私はこのような状態を「前脛骨筋の働きが悪いので、足の母趾が落ちている状態」と考えていますが、ほとんどの人は「自分のアーチはしっかりしている。偏平足ではない。」と思っているうようです。

 さて、このように後脛骨筋がこわばって舟状骨が上がった状態は、踵骨を内側に引き寄せますので、足が内返し状態になってしまいます。つまり、歩行時に足の小趾側で着地するようになりますが、それは小趾側の筋肉に余計な負担を掛けることになります。
 立っていても、足裏全体で地面をとらえることができずに、内側(母趾側)が浮いて小趾側ばかりで立っているような状態になっています。足が外側に回旋しながら立っていると言ってもよいかもしれません。ですから、当然のように小趾側アーチは崩れています。

骨格を整えるために‥‥隣り合う骨を確認することから

 骨格が乱れてしまうのは付着している靱帯や筋肉、あるいは関係する筋膜の状態がおかしいからです。ですから、最終的には靱帯や筋肉を整えることが施術になりますが、骨に歪みをもたらしている大元の原因を特定していく段階では「隣り合う骨の状態を確認する」ことが必要不可欠な作業になります。
(もちろん、小趾に直接繋がっています小趾外転筋や短小指屈筋、長趾伸筋などの状態を確認する必要はあります。)

 小趾側アーチで問題になるのは第5中足骨(小趾中足骨)の沈みを含めて不安定さです。ですから、先ず隣り合う骨として第4中足骨、あるいは立方骨との関係を確認します。稀に第5基節骨の状態が影響を及ぼしている場合もありますので、それも確認して、それらを比較します。

 立方骨がどちらかに回旋していて、それによって第5中足骨が不安定になっているのであれば、立方骨を回旋させている原因を次に追求していきます。
 立方骨と隣り合う舟状骨の状態による影響かもしれませんし、あるいは隣り合う距骨や踵骨による影響かもしれません。
 (距骨の歪みが原因になっている場合は多いようです。)
 時間と手間のかかる作業になりますが、一つ一つを丁寧に確認して原因を特定することが小趾側アーチを安定させるための方法につながります。

 例えば、上記で取り上げました後脛骨筋のこわばりによって舟状骨が引き上げられ、そして踵骨が内側に捻れてしまった場合を考えてみます。
 舟状骨が引き上げられたことによって、隣り合う立方骨が歪んで第5中足骨が不安定になっている場合は、こわばった後脛骨筋をゆるめることで舟状骨が本来の位置に戻って問題が解決することもあります。
 あるいは、後脛骨筋がこわばって踵骨が内側に捻れたことで隣り合う立方骨が歪んで、第5中足骨がおかしくなっていることもあります。

 しかし、実際にはこんなに単純な場合はほとんどありません。小趾側アーチが機能していない状態で長年過ごしている場合がほとんどですので、関係する靱帯が伸びきっていたり、あるいは反対に硬結状態になっていたりしますので、靱帯を整えることも必要になります。
 足首の要である距骨は、いろいろな靱帯の影響を受けて歪んでいる場合が多いのですが、距骨が歪んでいますと、立位における重心の位置がおかしくなっています。ですから、小趾側アーチを整える上で「距骨と重心」を同時に整えることも重要になってきます。

捻挫痕による影響

 過去に捻挫した経験のある人は、今、痛みや腫れがなくても靱帯が本来の状態に戻っていない可能性が高いと思われます。

 足首を外側に挫いた捻挫(内返し状態)の場合、前距腓靱帯、後距腓靱帯、踵腓靱帯が伸びてゆるんだ状態になっている可能性があります。
 そして、それを補うように足首の内側にあります前脛距靱帯、脛舟靱帯、後脛距靱帯、脛踵靱帯が硬くなっている可能性があります。そして距骨が外側に回旋しているかもしれません。

 あるいは、背側中足靱帯がゆるんだままで、第4中足骨が不安定になっていることもよく見受けられます。
 第4中足骨が足根骨から少し離れた状態になっているために立方骨が沈んでしまい、同時に第5中足骨も沈んでいる場合もあります。
 このようなときは第4中足骨を足根骨の方に押し込むようにしますと、立方骨を始め距骨や踵骨も安定して小趾側アーチが安定することがあります。
 そしてこのような場合は、背側足根中足靱帯や背側中足靱帯などの損傷が回復していない可能性がありますので、適切な対応をして骨格の安定を確保することが施術方法となります。

 これらのように、同じ第5中足骨の不安定さに対してその原因は様々です。
 ですから、実践を重ねて観察と検査の能力を磨き、そして的確に原因を修正できる能力を身につけることが重要です。
 この過程においては、ごまかしは全く通用しませんので、じっくりと何度も何度も体験を重ね、確実に技術力を向上させるようにしてください。

恥骨と恥骨結合と鼡径部

 恥骨と恥骨結合と鼡径部は腹筋群の起始として大切なところでもありますが、内臓下垂を防ぐ意味でも重要です。

 鼡径部(鼡径靱帯)が下がっていたり、頼りない状態ですと小腸の収まりが悪くなる可能性があります。
 鼡径ヘルニア(脱腸)は鼡径部から小腸がはみ出してしまったような状況ですが、鼡径部をしっかりさせることで症状が改善した例があります。
 太ってお腹がはりだし鼡径部からこぼれ落ちそうな人、下腹部だけが出ているような人、これらの人に対しては、鼡径部の状態を整えることは重要です。
 そして、鼡径部と恥骨および恥骨結合は密接な関係にありますので、骨盤の前面という意味でこの部分を捉えることがよいと思います。

 さて、大腿部の内転筋は恥骨を起始としていますが、長内転筋と薄筋は鼡径部の在り方に影響を与えます。
 また、直接恥骨には繋がっていませんが、内側広筋は恥骨および恥骨結合と密接な関係にあります。
 そして長内転筋がこわばっている場合は、間違いなく鼡径部が下がっています。ですから、鼡径部を整える時に先ず調整すべきは長内転筋であり、その連動である後脛骨筋と母趾外転筋です。
 さらに、長内転筋は内腹斜筋~後斜角筋~咬筋へと連動しますので、そのこわばりは首が前に出ることや噛みしめ癖をもたらす可能性があります。そして、その意味でも舌の状態に影響を及ぼします。

 長内転筋がこわばってしまう理由はいくつかありますが、その一つに椅子に座ったときに太股の内側(長内転筋)に力を入れて座位を支えてしまうことがあります。
 椅子に座るときには骨盤にからだを委ねるのが本来の在り方なのですが、それができない人がたくさんいます。
 そして、そのような人は無意識に内股の筋肉に力をいれ、更にその延長線上である足裏や足趾に力をいれて、つまり「踏ん張って」座位を支えるようになってしまいます。さらに、猫背にならないようにと背筋を伸ばすために背中(背筋)に力を入れてしまいますが、それは首や肩や顔の緊張と凝りにつながってしまいます。
 本来、椅子に座ることは「からだを休めること」なのですが、椅子に座ることで緊張状態になってしまうようです。
 そして、このような人は内股の長内転筋が収縮してこわばっていますが、筋肉の連動関係でハイアーチもどきをもたらす後脛骨筋のこわばり、そして母趾外転筋のこわばりを招いてしまいます。

 この状況によって益々重心が小趾側に掛かるようになりますが、それは踵の外側~腓骨筋のこわばりに繋がります。腓骨筋は大腿筋膜張筋と連動しますが、膝関節で脛骨を外側に歪ませてしまいます。

 脛骨が本来よりも外側にずれたことによって鵞足を形成しています縫工筋と薄筋と半腱様筋はこわばってしまいますが、内側広筋もこわばってしまいます。すると恥骨は下方に引っ張られますので、鼡径部が下がってしまいます。
 この状況は、小趾アーチ~鼡径部~舌へと続く上昇するエネルギーの流れを邪魔することになりますので、舌の状態に影響をもたらすことになります。
 また、恥骨結合は骨盤前面の中央部を繋いでいますので、それは(東洋医学の)任脈の重要部分です。ですから、恥骨結合の状態は内臓の働きにとって非常に重要であると言えます。
 現に、恥骨結合が硬くなっていて柔軟性に乏しい人は、それだけで内側広筋~腹直筋の中央ライン~胸骨~喉~オトガイのラインがこわばってしまいます。それは腹部中央ライン(任脈)のエネルギーの流れが悪くなってしまうことでもありますので、内臓の働きが弱くなってしまう可能性があります。

 そして、恥骨結合が硬くなってしまう理由のほとんどは、内股に力をいれて骨盤を閉じているからだと思われます。
 電車の椅子に座ったとき、男性は股を気にすることはないと思いますが、スカートを履いている女性は、無意識のうちに自然と股間を閉じ、膝を閉じるようにしていますが、そのような行為により、恥骨結合が硬くなってしまうのかもしれません。
 ですからこのような場合の恥骨結合に対する施術は、静かに、ゆっくり、じっくり、適度な強さで左右の恥骨間を軽い力で少し開くようにしてストレッチすることになります。あるいは手指を恥骨結合に当てるだけかもしれません。

「上昇する力」を把握する

 いわゆる「気の流れ」は、たくさんからだを観察することによって少しずつ解るようになります。それは頭で理解するものではなく、からだで感じるものであり、素直で純粋な心と疑いをもたない思考回路が必要です。
 上昇する力(エネルギ-)は現象面では、舌を上昇させ、上顎骨や頬骨を上昇させます。つまり舌が口蓋を軽く押す状態になり、舌の力で口を閉じることができるようになります。ですから咬筋などから力が抜けて奥歯が離れても口を閉じ続けることができます。オトガイの筋肉を使わずとも口が閉じていられますので、「梅干し」状態の顎先にはなりません。
 これは気の流れがわからなくても、物理的現象として明らかに現れます。ですから、このような状態になることを目指して施術を行ってください。

 上昇する力が発揮できる状態にするための施術では、小趾側アーチを築き上げることから始めるのが良いでしょう。そのことによって自然と鼡径部が上がり、呼吸が変わり、口周りや顔の感じが変化していきます。
 そして、小趾側アーチの安定だけでは、「今一つパッとしない」と感じるようであれば、鼡径部や骨盤の歪み、胸郭の歪み、首の張り、舌骨周辺なども確認して調整するようにしてみてください。

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