下腿と足部への施術③‥‥足底

足底への施術

 「足つぼ」「足リフレ」は足の反射療法のことですが、足底にはからだの各部位につながっている反射区があります。
 また、足底には下腿を起始とする筋肉の停止があります。さらに、足底にはいくつかの短筋もあります。
 足底を施術する時には、これらの筋肉と連動関係にある筋肉を常に意識し、反射区を意識しながら行うことが大切です。

母趾外転勤

 母趾外転勤は下腿内側面への施術のところでも取り上げました。
 後脛骨筋―長内転筋―内腹斜筋―上腕筋―母指内転筋(手)という連動関係をもっていますが、こわばっている人が大変多いので、誰もが施術対象となります。
 母趾先(末節)が内旋して関節の2趾側に硬結ができている人が大変多いのですが、それは歩行時など、地面を蹴るときに母趾MP関節を捻っているからだと考えられます。この状況は外反母趾の原因になりますが、母趾先が捻れることによって母趾外転筋は強くこわばります。
 そしてそのこわばりは後脛骨筋のこわばりをもたらしますが、舟状骨が引き上げられるのでハイアーチ状態になります。さらに、後脛骨筋と拮抗関係にある前脛骨筋がゆるみ過ぎの状態になりますので、母趾中足骨が下がってしまいます。ハイヒールを履いていなくても母趾MP関節が落ち込んでしまう状態になりますが、この状態のまま歩き続けることで開張足や外反母趾になってしまう危険性が高まります。
 ですから、足の問題を訴える人に対しては、母趾の捻れ―母趾外転筋―後脛骨筋―長内転筋―内腹斜筋という一連の流れを整えることは非常に重要です。

短母趾屈筋

 短母趾屈筋は薄筋―腸骨筋―小菱形筋―小胸筋と連動関係にありますので、腰痛の人、O脚の人、肩甲骨が外に動いて小菱形筋がこわばっている人などは短母趾屈筋がこわばっています。
 また、立方骨の不安定さやずれによって短母趾屈筋はこわばりますが、これによって腰痛や肩こりを訴える人もいます。
 ときどき、足裏の母趾のつけ根やそのラインが突っ張って痛むと訴える人もいます。

母趾内転筋

 足の横アーチが乏しい開張足の人は母趾内転筋がゆるんでいる場合と、開張足故に母趾内転筋がこわばっている場合があります。
 母趾内転筋は膝窩筋―小殿筋―棘上筋―肘筋と連動関係にあります。
 開張足を直したいと考えたとき、上記の連動関係にある筋肉や関係する関節をよく観察して対応することが要になります。
起始:
 横頭:第3-5中足趾節(MTP)関節の関節包、深横中足靱帯
 斜頭:第2-4中足骨の底、立方骨、外側楔状骨
停止:第1基節骨の底(外側種子骨経由)

短小趾屈筋

 からだの外側に重心が逃げてしまう人は小趾側に負担が掛かっていますので、短小趾屈筋がこわばっている可能性があります。短小趾屈筋は連動として腓腹筋内側頭になりますが、その先、大腿二頭筋長頭―梨状筋―側線2―棘下筋―上腕三頭筋外側頭―長橈側手根伸筋とつながっていきます。
 大腿二頭筋長頭がこわばって坐骨結節が外側にずれ、座位で腰部に張りが出てしまう人がいます。このような場合、短小趾屈筋のこわばりを丁寧にかいしょうすることで問題を解決できる場合があります。
 また、小趾側に重心のある人は短小趾屈筋の他に長趾伸筋や第3腓骨筋がこわばっていて、それが大腿筋膜張筋につながり、脛骨を外側にずらしている場合もあります。

 起始:第5中足骨(、長腓骨筋腱、長足底靭帯)
 停止:小趾の基節骨底
 作用:小趾のMP関節を屈曲する
 point:小趾側重心の人は強くこわばっていますので、施術ではしつこいくらいに、そしてMP関節付近や停止部までしっかり弛めましょう。

長腓骨筋腱の停止部

 長腓骨筋腱は外果の下を通って小趾中足骨の後方から足底に入り斜めに横切るように走って母趾中足骨底の内側と内側楔状骨に停止します。反対側には前脛骨筋腱の停止部がありますので、長腓骨筋と前脛骨筋は影響し合う関係にあると考えることができます。
 歩き方や立ち方に問題のある人は母趾中足骨の使い方が悪いので、長腓骨筋停止部が強くこわばっていることが多いです。
 長腓骨筋は腕橈骨筋―前鋸筋―大腿筋膜張筋―長腓骨筋という連動関係による影響や、小趾中足骨や腓骨の不安定さによる影響でこわばることがあります。あるいは短腓骨筋がゆるみ過ぎの状態であるために拮抗関係でこわばる場合がありますが、その他に母趾中足骨に絡む原因の場合があります。ですから、母趾中足骨に関係する前脛骨筋、母趾内転筋、短母趾屈筋、そして母趾外転筋と後脛骨筋、さらに長母趾屈筋なども確認して整える必要があります。

短趾屈筋

 短趾屈筋は腓腹筋外側頭―半腱様筋―大殿筋―側線3―棘下筋―上腕三頭筋外側頭―短橈側手根伸筋と連動関係にあります。
 「足底が張って痛む」という場合、短趾屈筋のこわばりが原因になっている場合もあります。また、「踵を着くと痛む」という場合も原因である可能性があります。
 腓腹筋外側頭および、アキレス腱の停止部である踵外側の筋膜のこわばりを確認しましょう。
 そして開張足などで4趾のMP関節付近が痛むといった場合も短趾屈筋を確認します。

 足趾が曲がっている人は多いのですが、足趾の基節、中節辺りのこわばりは短趾屈筋のこわばりである可能性があります。

反射区

 いわゆる「足つぼ療法」である足のリフレクソロジーにおいては、足底に、内臓の働きに関係する反射区(刺激を与えると臓器が応える)があるとされています。そして、反射区はたくさんあります。
 これら反射区を原則的に全部刺激して、内臓全体の働きを整える保健的な目的が「足つぼ」「足リフレ」療法にはあります、多くの反射区を刺激する療法は、不調を取り除くという面では「刺激が足りない」可能性があります。
 例えば腎臓は疲労が蓄積するなどの理由で頻繁に膨らんで腰痛と間違えるような症状をもたらしますが、3~5回程度刺激したからいって状態が変わることはありません。やり方としましては、腎臓の反射区を念入りに、例えば3分程度時間をかけてじっくり刺激し続けるようにします。すると腎臓反射区の感じに変化が現れますが、同時に腎臓の腫れが軽減するといった状況になります。
 ですから私たち整体セラピストは、「満遍なく全体を刺激する」といった方法ではなく、的を絞って、数カ所、しっかりと刺激するという方法を選んだ方が望ましいかもしれません。
 その意味で、私たちの仕事に役立ついくつかの反射区を取り上げます。ただし、予備知識として足底全体の反射区の位置が頭に浮かぶようにしておくことは望ましいことです。

腎臓の反射区

 東洋医学において、腎は耳や骨と密接につながり、脳と関係するとされています。そして実際、難聴、耳鳴りなど耳に症状を持っている人は腎臓が腫れていたりします。
 腎臓が腫れている人は肋骨の下部が膨らんで硬くなっており、指圧すると不快な痛みを感じます。ベッドに寝ているだけでも圧迫を感じ、腰痛と間違えることも多々あります。
 腎臓の反射区は足底の表層をいくら刺激しても届きません。足底には分厚い筋膜や幾重もの筋肉があって刺激に負けない構造になっていますので、それらの向こう側、一番奥に腎臓の反射区があると思ってください。実際、手指が届くようになりますと、奥にあるコリっとしたものが感じら、それを強めに指圧しますと、とても痛がるかもしれません。ところがそのコリッとしたものが消え去っていきますと刺激による痛みも軽減し、心地よさを感じるようになるととも、実際の腎臓の腫れも引いた状態になると思います。

胃の反射区

 胃の不調にはいろいろなタイプがあります。胃の反射区への刺激は、胃の不調全般に効果を有するというものではないようですが、不調の一部へは効果が認められる場合があります。
 この反射区は短母趾屈筋や種子骨と重なっていますので、それらの変調や不具合によって痛みを感じていたり過敏になっている場合もあります。ですから、指圧による刺激やストレッチ、揉みほぐしなどをする際は、慎重に、軽めの圧から始め、様子を見ながら刺激を強めるようにするのが良いでしょう。
 反射区のポイントは、他の反射区同様深部にありますので、そのことを念頭にケアを行ってください。

小腸の反射区

 お腹の冷えている人は小腸の反射区がとても硬くなっています。東洋医学の見解では、心臓と小腸は陰と陽の関係、表裏一体の関係にあるとされています。
 昼間、交感神経が優位に働いているときには心臓が主体になって血液を循環させていますが、夜寝ている間は大脳や心臓が働きを弱めて休息モードに入り、副交感神経が優位になって内臓の働きが活発になります。その日に食したものを栄養として血液の中に吸収するのが小腸の役割ですから、そのために小腸がフル回転の状態になります。つまり小腸にたくさんの血液が集まることになります。ですから、夜中の血液循環の主体は小腸であると考えることができます。
 ですから、小腸の働きが低下している人は寝ている間の血液循環が芳しくありませんので、からだは冷えます。あるいはお腹の冷えている状態では小腸の働きが低下しますので、食べたものを栄養として吸収する能力が低下してしまい、からだの不調を招く可能性があります。
 このようなことを念頭に、小腸反射区への施術を行うことが重要です。
 実際、お腹の冷えている人は小腸反射区がとても硬くなっていますし、刺激すると非常に痛がります。しかし、そのような人であればこそ、刺激して柔らかくすることが必要です。
 お腹の調子が悪いと訴える人に対しては、効果的な反射区です。 

その他の反射区

  • 頭の反射区を刺激することで「頭がスッキリする」と反応する人もいます。
  • 肝臓の働きに問題がありそうな人に対しては、肝臓と胆嚢の反射区を刺激することはよいと思います。
  • 便秘の人に対しては、大腸である上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸の反射区を刺激することもよいと思います。
タイトルとURLをコピーしました