筋骨格系と循環系の両面

 からだに不調や不具合が生じたとき、それは筋骨格系の問題なのか、それとも循環系の問題なのか、という二つの視点で観察することも大切です。

 例えば、足首を捻ってしまい上手く歩くことができない場合は、筋肉や靱帯が損傷したことが原因ですから筋骨格系の問題であると言えます。
 ところが寒い冬の朝、足がとても冷たくて足趾が思うように動かせないために上手く歩くことができない場合もあります。こちらは血行不良で筋肉が上手く働けなくなったからですから、循環系の問題であると言えます。

 上記はとても単純な事例ですが、実際のからだの不調や不具合の中には、この二つの観点での問題が両方内在している可能性があります。
 たとえば捻挫によって筋肉や靱帯が損傷して歩くことのできない場合、骨格が歪んでいる可能性が非常に高いです。骨格が歪みますとその部分の血流は悪くなります。つまり、筋骨格系の問題は循環系の問題も引き起こすことになります。
 そして血流が悪くなりますと、筋肉や靱帯の回復に時間がかかってしまいますので、捻挫による不具合がなかなか治らなくなってしまいます。
 ですからこのような場合は、まず筋肉や靱帯の損傷箇所をなんらかの手段で補ったり修復して骨格が歪んでいる状態を解消するようします。
 そして、さらに温めるなどして血液循環を促し、損傷部位の血流が活発になるように試みます。これが効率の良い対処方法です。
 ただし捻挫の場合、損傷した当初は炎症を起こします。この時に温めたりして血液循環を促しますと炎症が悪化して症状が酷くなりますので、炎症が治まるまでは温めるのではなく冷やすことが適切な処置です。

 筋肉がしっかり働くための必要条件があります。それは後ほど学びますが、その中の項目に「熱エネルギー」があります。
 冷え込んだ日の朝方は、手指先に力が入らず思うように手先が使えないことがあります。それは血液の循環不良という面もありますが、熱が不足しているために筋肉が働けない状態になっていると考えることができます。血管も筋肉ですから、熱が足りないので血管の機能が悪くなり、循環が悪くなっていると考えることもできます。

 腰痛や神経痛で悩んでいる人がお風呂で温まると痛みは緩和します。膝に不具合があって正座ができない人も湯船の中では正座ができるようになる場合もあります。
 これは、筋骨格系の問題で筋肉が伸びない状態だったものが、湯船で温まり熱エネルギーを得たので筋肉が伸びるようになったからだと考えることができます。
 あるいは、循環不良の問題で筋肉が伸びない状態だったものが、温まったことで循環が活発になり、筋肉が伸びるようになったのかもしれません。

 このように、からだの不具合のほとんどには筋骨格系と循環系の両面が絡んでいますので、私たち施術者は常に筋骨格系と循環系の両方を頭に入れて対処する必要があります。

筋骨格系症状と循環系症状の特徴

 たとえば膝関節に問題があって膝の曲げ伸ばしが上手くできない人に対して施術を行い、関節の歪みを整え、関連する筋肉や筋膜の状態を整えて膝関節の問題を解消しますと、瞬時に症状は消えます。
 これは筋骨格系の問題は施術の結果がすぐに現象として現れる特徴があるということです。

 一方、股関節に問題があって鼡径部の状態が悪く、血液循環が停滞して全身的にむくんだ状態になっている場合、股関節を整え、鼡径部の状態を改善したとしても、全身のむくみが瞬時に解消されることにはなりません。施術中に少しずつ血液循環が回復しだし、何分かしてからむくみが改善されていくのが体感できたり、あるいは「一晩寝て起きたらむくみが改善されていた」となる場合もあります。
 つまり循環系の問題は、施術の結果が現れるまでに時間が掛かる場合があります。

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