前腕の骨(橈骨と尺骨)が歪んでいるために肘関節や手関節(手首)、さらには母指のCM関節などが不安定になっている人がかなりいます。
「前腕の回内位を修正する」という①の項目で円回内筋と方形回内筋について取り上げましたが、この二つの筋肉に加えて前腕深層の伸筋を整えることも重要です。
尺骨が捻れていますと肘関節が不安定になりますので、上腕三頭筋長頭と内側頭、肘筋などが変調を起こします。あるいは烏口腕筋がこわばるかもしれません。そして同時に手首で尺骨頭の位置が悪かったり、母指中手骨が落ち込んだりする歪み発生することがあります。
そんな時には、屈筋側の円回内筋、方形回内筋の施術からはじめますが、それらの筋肉の変調が改善されたとしても上腕腕頭筋の変調が変わらなかったり、手首の状態に大きな変化が起きないことがあります。そんな時に有効になるのは長母指外転筋、長母指伸筋、示指伸筋など尺骨に起始している筋肉の変調を整えることです。
母趾先や示指先を使いすぎている人は、母指や示指の末節が歪みますが、それによって長母指伸筋や示指伸筋がこわばります。ですから手指の末節のこわばりを取る施術を行います。
パソコンのキーボードをたくさん叩いている人、ピアノをたくさん弾いている人などは、指を引き上げる(伸展)動作や母指を開く(外転)動作をたくさんしていますので、長母指外転筋、長母指伸筋、示指伸筋、指伸筋(総指伸筋)、小指伸筋がこわばっている可能性があります。同時に手首を背屈する長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋がこわばっている可能性があります。
そして長母指外転筋、長母指伸筋、示指伸筋のこわばりが強い人は、尺骨の際がコリコリと硬くなっていますので、それが目安になります。
これらの前腕深層の伸筋のこわばりが強くて、尺骨の捻れが強く大円筋がこわばって肩甲骨を引っ張り出しているために腕が後ろに回らない肩関節の不具合などを起こしている人もいます。
パソコンを業務としている人は、常に前腕の回内位で作業を行っていますので、円回内筋、方形回内筋、短母指外転筋などがこわばっていますが、同時にこれら前腕深層の伸筋もこわばっていることが多いので、前腕回内位を修正するためには、これら伸筋のこわばりを解消することも忘れずに行ってください。