顔面(頭蓋)の歪みに関係する筋肉と施術(1)

 顔(頭蓋骨)の歪みを調整するときには、当然ながら、まず頭蓋骨がどのようになっているのかを把握する必要があります。そして歪みがある場合、その原因を探してそれを修正するわけですが、頭蓋骨を形成している骨のそれぞれに付着している筋肉がどうなっているのかを正確に把握することはとても大切です。

 頭蓋骨を整えるときは、まず頭部と顔面部(頭蓋骨)だけに関わる筋肉と、からだの他の部分から頭蓋骨に繋がっている筋肉に分けて対応することが重要です。
 そして調整の順番としては、まず頭蓋骨以外からの影響によるものを整え、頭蓋骨以外からの影響が軽減した状態の頭蓋骨にします。
 そして次に顔面・頭部だけで完結する筋肉の調整に進む方が良いでしょう。

頭蓋骨以外から頭蓋に繋がっている筋肉

1)後頭骨に関係する筋肉

後頭下筋群

 後頭下筋群は後頭骨と上部頚椎(環椎と軸椎)を繋いでいますので、頚椎と頭蓋骨の歪みに関係します。
 環椎は環椎後頭関節面が後頭骨に対して前後にスライドできるようになっていますが、後方では小後頭直筋と上頭斜筋の影響を受け、前方では頭長筋の影響を受けて歪む可能性があります。
 また、瞳を向けた方に、咬合した方に環椎は引っ張られますので、眼の使い方に偏りがあったり、片噛みや噛みしめの癖があったりしますと横方向に歪みますが、それによって後頭骨も歪むという理屈になります。ですから後頭骨を調整するに際して、上部頚椎の歪み及び後頭下筋群の変調を確認する必要があります。

 現代社会に多い、首が前に出た状態で下を向いたり正面を見たりする動作は環椎後頭関節を頻繁に使う動作ですが、この時、大後頭直筋と小後頭直筋と上頭斜筋が主体となって働いています。ですから、多くの人はこれらの筋肉がこわばった状態になっています。
 このように使いすぎでこわばってしまった後頭下筋に対しては持続的指圧でこわばりをゆるめる施術が妥当です。

上部僧帽筋

 上部僧帽筋(僧帽筋上部線維)は後頭骨(上項線と外後頭隆起)と項靱帯を起始としていて、鎖骨(外側1/3)、肩甲棘、肩峰を停止としてますので、後頭骨と肩甲骨及び鎖骨の在り方に関係します。

 肩甲骨および鎖骨は肩関節において棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、三角筋の影響を受けています。また、胸郭との関係では小胸筋と大胸筋の影響を受け、上腕骨との関係では上腕二頭筋、上腕三頭筋、烏口腕筋の影響を受けますので、これらの筋肉の変調は間接的に上部僧帽筋に影響して後頭骨の歪みに影響します。
 肩こりが長じて上部僧帽筋に強いこわばりができている人がいますが、この場合は、直接上部僧帽筋をゆるめる施術をおこないます。そして、ほとんどの人がコリを感じない、肩峰・肩鎖関節付近・鎖骨の付着部などがこわばっている人は多いです。この部分は強く揉んだりしますと「揉み返し」の反応が起こりやすいところですから、優しく施術を行ってください。ただし、後頭骨を歪ませる原因になっていることもありますので、しっかりチェックしてください。

頭板状筋と頭半棘筋

 頭板状筋と頭半棘筋は連動的性質として脊柱起立筋を延長したものとして考えてもよいでしょう。
 ですから、骨盤の状態が後頭骨の在り方に関与するという現象をもたらします。


頭板状筋

  • 起始:下位5頚椎の高さにある項靱帯、上位2または3胸椎の棘突起から起こり、外側上方にはしる
  • 停止:側頭骨乳様突起、後頭骨上項線の外側部
  • 作用:一側が働くと頭をその側に回転し、顔面を上方かつその側に向け(胸鎖乳突筋の拮抗筋)、両側が同時に働くと頭を後方にそらし、顔面をあげる

頭半棘筋

  • 起始:頭半棘筋:上位6胸椎横突起および下位3~4頚椎の棘突起から起こり上方に向かう
  • 停止:後頭骨の上項線と下項線の間の後頭鱗
  • 作用:脊柱を後方に曲げ、かつ一側が働くと反対側に回転する。

 施術の実際として、頭板状筋と頭半棘筋をきっちり区分けして対応することは難しいことです。
 背部の側線1、側線2、側線3と分けたラインを目印にして、その考え方で対応する方が現実的です。
 側線1は、脊柱固有筋群であり、ここでは頭半棘筋の背骨に近い部分となります。
 側線2は、基本的には胸最長筋のラインですが、頭最長筋は側頭骨に付着していますので、側線3のラインと混同する可能性があります。
 側線3は、基本的に腰腸肋筋のラインですが、頚板状筋と頭板状筋はこのラインに含まれるかもしれません。

頭長筋
  • 起始:第3~6頚椎の横突起の前結節から起こり、斜め上内側方に向かう。
  • 停止:後頭骨の底部の下面
  • 作用:頭を前方に曲げる。

 頭長筋は後頭骨の底部に付着して「うなずく」動作など環椎後頭関節で環椎に対して後頭骨(頭部)を屈曲・伸展する働きをします。
 下を向く姿勢が大変多くなっている現代人は頭長筋がこわばっている可能性が高いと考えられます。すると頭部は前にスライドした状態で尚且つ屈曲位になりますので、後頭骨は後部(外後頭隆起や上項線)が上がって上部頚椎の棘突起から離れた状態になりますので、小後頭下筋、大後頭下筋はこわばります。

 頭長筋への施術では「喉」に注意しながら、より慎重な態度が大切です。
 こわばった頭長筋をゆるめる方法としては持続指圧になりますが、強く痛みを感じる人もいます。ですから指圧に対する反応を見ながら、徐々に力を加えていくのがよいでしょう。


「顔の下がり」と後頭骨との関係
 頭蓋骨はシーソーのように、後部が上がると前部(顔面)が下がるという仕組みになっています。つまり、後頭骨の後部が上がった状態になりますと顔が下がります。
 ですから、小後頭下筋、大後頭下筋、上部僧帽筋、頭板状筋、頭半棘筋がゆるみ過ぎの状態になりますと、顔は下がることになります。
(胸鎖乳突筋も後頭骨につながっています)

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