斜角筋
頚椎の安定を考えるとき、体幹と頚椎を繋いでいる筋肉を整える必要があるという考え方がなり立ちます。
斜角筋はその中に該当する筋肉です。前斜角筋は第3~6頚椎の横突起(前結節)と第1肋骨を繋ぎ、中斜角筋は第2~7頚椎の横突起(後結節)と第1肋骨を繋ぎ、後斜角筋は第(5)・6・7頚椎横突起(後結節)と第2肋骨を繋いでいます。
これら3つの斜角筋は収縮することで胸郭を引き上げますので、呼吸筋としての役割もになっています。
「首の位置が定まらない」「首の座りが悪い」という症状を訴える人がいた場合は、斜角筋の状態を確認してみる必要があります。
前斜角筋
首(頚椎)の真横より少し手前を触り、頚椎を前方に傾けたときにその収縮を確認することができます。
咬筋の深部線維と連動していますので、食いしばった状態の時に収縮します。
前斜角筋がこわばった状態になりますと胸郭が後方移動し、喉が前にでて喋りに弊害が出る可能性があります。
鼡径部が下がった状態ではこわばります。
中斜角筋
首(頚椎)の真横を触り、頚椎を同側に側屈したときにその収縮を確認することができます。
咬筋の浅部線維と連動しますが、そしゃく動作で奥歯を噛みしめたときに収縮します。
通常は前斜角筋と拮抗的に働きます。
前斜角筋と中斜角筋は、その間に鎖骨下動脈と腕神経叢が通っていますので、第1肋骨が下がったりして両筋肉ともこわばった状態になりますと、胸郭出口症候群の症状が現れる可能性があります。
後斜角筋
文献によって起始がまちまちですが、停止は第2肋骨です。
側頚部で中斜角筋と肩甲挙筋の間に観察することができますが、前斜角筋同様、咬筋の深部線維と連動しますので、食いしばった状態のときに収縮します。
斜角筋が付着している第1、第2肋骨は前鋸筋、手の第1背側骨間筋、その他の影響を受けて歪みます。
第1、第2肋骨の歪みによって前斜角筋と後斜角筋がこわばりますと、それは咬筋深部線維のこわばりに繋がりますので、本人の自覚に関係なく噛みしめ状態を招くことになります。
椎前筋
頚長筋と頭長筋
頚部前面には甲状軟骨(喉仏)がありますが、喉を含めて空気の通る気管とそのすぐ後側に食物の通る食道があります。そしてその奥(裏側)に頚椎があって、頭長筋と頚長筋はそこにあります。ですから「奥に手を突っ込まないと触ることができない」筋肉が頭長筋であり、頚長筋です。
この辺りには頚動脈がありますし、咽頭の働きに関係するデリケートな筋肉もありますので、慎重に触れていかなければなりません。頭長筋、頚長筋がこわばっている人は多いのですが、筋肉に手が届きますと少し痛みを感じます。
持続的に圧(指圧)をかけ続けていますと痛みからイタキモ(痛気持ちよい)にかわり、やがて痛みも柔らでいきます。そして同時に、眼の働き、顔のハリ、他の感覚器官の働きが良くなるのを感じることができると思います。椎骨動脈の流れが良くなり、脳幹への血液供給量が増えたからだと考えることができます。
頚長筋
頚長筋は頚部の筋肉のうち、頚椎に沿うように前方に存在する筋肉です。上斜部、垂直部、下斜部の三部に分けられます。頚部を前屈させる働きをします。
垂直部:最内側に位置し、上位3胸椎及び下位3頚椎の椎体から起こり、上方に向かって第2~4頚椎の椎体に停止します。
上斜部:第3~5頚椎の横突起から起こり、上方に向かって環椎前結節に停止します。
下斜部:第1~3胸椎の椎体から起こり、上方に向かって第6及び7頚椎の横突起に停止します
両側が働きますと頚椎を前方に屈曲し、一側が働くと収縮した筋の側に頚椎を曲げます。
頭長筋
頭長筋は頚椎と後頭骨下面を繋いでいる筋肉です。頭を前方に曲げる作用働きをします。(うなずく動作など)
第3~6頚椎の横突起の前結節から起こり、斜め上内側方に向かって後頭骨の底部の下面に停止します。両側が収縮することで頭を前方に曲げます。