腰痛‥‥筋肉の変調による腰痛

 腰痛には幾つものパターンがあります。内臓の調子が悪くて腰部に痛みを感じる場合もありますし、内臓関係では腎臓が腫れて膨らみ、肋骨に圧迫されて痛みを出すという場合もあります。(この場合は、足や手の腎臓反射区を利用することで対処します。)

 筋・骨格系の問題では、整形外科的には腰椎椎間板ヘルニア、あるいは脊柱管狭窄症、脊椎分離すべり症などを中心に画像診断等で判断するようです。しかしながら人々が感じる腰痛のほとんどは、そのような病名がつくものではなく、筋肉系の問題であり、筋肉が発する痛みであると言えます。

 筋肉系の問題というのは筋肉の変調のことですが、単純に以下の二つに大別することができます。
 ①こわばっている筋線維を伸ばそうとすると痛みを発する
 ②ゆるみ過ぎ状態で、うまく収縮できない筋線維を収縮させようとすると痛みを発する

 常に上記の大原則を頭に入れて、施術においては変調の一つ一つを丁寧に観察していくことが大切です。

脊柱起立筋群と腰痛

 「腰が痛い」と多くの人達が症状を訴えるとき、私たちがまず判別しなければならないことは、腰部の痛みなのか、骨盤あるいは臀部の痛みなのか、神経痛なのか、という点です。殿部の痛みでは神経痛との関連性(梨状筋)も考えなければなりませんが、骨盤(仙腸関節)や中殿筋が問題である場合も考えられます。
 そして、腰部(骨盤と胸郭の間)の痛みであるならば、直接的な原因は脊柱起立筋群のこわばりである可能性が最も高いと考えられます。(腰方形筋や外腹斜筋がこわばっている場合も稀にあります)

 さて、脊柱起立筋は骨盤(腰背筋膜)を起始としていますが、腸肋筋(側線3)、最長筋(側線2)、固有筋群(棘筋、回旋筋、多裂筋など 側線1)に大きく分けて考えます。
 側線1の固有筋群は脊柱の安定、側線2の最長筋は脊柱の前屈や伸展(背屈)、側線3は脊柱及び胸郭の回旋に関係が深いと言えます。

前屈と背屈(伸展)に関係する側線2

 前屈する動作というのは背中の筋肉が伸びる、すなわち筋肉の長さが変化して長くなるということです。これが原則ですから、筋肉にこわばった筋線維があり、そこが伸びることができなければ前屈動作を完全に行うことはできなくなります。
 ですから、「前屈すると腰が痛む」という症状に対しては、まず、側線2を中心に脊柱起立筋群上のどのこわばりが症状を引き起こしているかを見つけ出して特定する必要があります。

 次に、そのこわばりの原因を特定することになりますが、考え方は大きく3つあります。
1.他の筋肉のこわばりが筋連動の仕組みによって腰部のこわばりとなっている
2.同じ筋肉の別の場所ゆるみ過ぎが原因でこわばっている
3.骨格の歪みや不安定のためにこわばっている

1.側線2は下方では梨状筋―大腿二頭筋長頭―腓腹筋内側頭―短小趾屈筋と連動し、上方では棘下筋―上腕三頭筋外側頭―橈側手根伸筋と連動しますので、関連する筋肉のどれかのこわばりをゆるめると、腰部側線2のこわばりがゆるんで前屈ができるようになります。

2.筋肉は自らを弛めて伸張するとき、どこかにその動作の支えを必要とします。
 上記写真で、青色は筋線維がゆるんで伸張している部分ですが、その動作を支えるために赤色の収縮点を同時に作ります。青色と赤色の部分は前屈の角度、すなわち筋肉の長さによって場所を変えますが、動作においては必ず弛緩伸張点と収縮点の両者が必要になります。
 仮に筋肉上に収縮できない部分(=ゆるみ過ぎ変調)があった場合、それを補うように収縮部分(=こわばり変調)が必ずできます。
 前屈の動作(=筋肉の長さを変化させる)の途中で痛みを感じ、その角度を保つことができない場合、痛みを感じる部分はこわばり部分ですが、その原因は動作を支えるための収縮点を作ることができないことであったりします。このような場合、収縮点を作りたい部分がゆるみ過ぎの変調状態であるために収縮できないからだと考えることができます。
 ですからこのような場合は、ゆるみ過ぎの変調を解消することがこわばりを除去するための方法になります。

3.筋肉は骨を足場として自身を伸縮させる仕組みになっていますので、足場である骨格が不安定な状態であれば、緊張してこわばり、伸張することができなくなります。
 あるいは腰椎が捻れていたり、肋骨が歪んでいたりして側線2がこわばってしまい前屈動作がスムーズに行えないということも考えられます。
 腰椎の安定、脊柱(脊椎)や肋骨の歪みによる影響を確認して対処する必要があります。

上半身の回旋に深く関わる側線3

 側線3である腸肋筋は肋骨の脊柱から離れた部分に停止していますので、胸郭の回旋に関わる筋肉であると考えられます。
 上半身を右(CW)に回旋するとき、右側の測線3が収縮すると同時に左側の側線3が弛緩伸張します。仮に右側線3にゆるみ過ぎの変調があった場合、右への回旋動作が不十分な状態になります。あるいは、左側線3にこわばりの変調があった場合、右への回旋動作は途中でブロックされる状態になってしまいます。
 ここで、回旋が「不十分な状態」「途中でブロックされる状態」と言葉遣いを分けました。今、それを見分けることは無理だとしても、ゆるみ過ぎ変調のために収縮しきれなくて動作が不十分な状態と、こわばり変調のために筋肉が伸びなくて動作がブロックされてしまう状態をやがては見分けられるように、こまかい観察眼を養ってください。

 変調の原因と対策については上記の「前屈と背屈(伸展)に関係する側線2」と同じで3つに分けて考える必要があります。

腰方形筋・内腹斜筋・外腹斜筋と腰痛

 腰方形筋は腸骨稜と第12肋骨をつないでいるという特徴があります。ですから、腰方形筋がゆるみ過ぎの状態になりますと、腸骨稜と胸郭の間が本来より広がります。それによって脊柱起立筋群がこわばり、腰部が張って腰痛になることはよく見受けられます。

 また、腰方形筋は中殿筋や広背筋と連動しますので、腰方形筋がゆるみ過ぎの変調状態になりますと中殿筋の働きが悪くなり、関連して大内転筋―大腰筋の働きも悪くなります。大腰筋は腰部の要の筋肉ですから腰痛に深く関係します。そして大内転筋は立位の安定に深く関係します。
 その意味で腰方形筋の状態を整えることは重要ですが、腰方形筋が自らの原因で変調することはケガの類以外あまり考えられませんので、連動する広背筋~腕~手の筋肉、中殿筋―大腿二頭筋短頭―小趾外転筋の状態を確認する必要があります。

 また、外腹斜筋も内腹斜筋も同じように胸郭と腸骨陵を結んでいますので、これらの筋肉がこわばりますと胸郭と腸骨陵の感覚が狭くなり、腰方形筋がゆるみ過ぎ状態になることがあります。

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